幹細胞コスメに効果なし!?期待される再生機能の実態とは?

最近、美容業界で話題の幹細胞。幹細胞コスメや幹細胞サプリという言葉を聞いたことがあるかもしれません。

アンチエイジングの最終兵器ともいわれています。

幹細胞コスメは、お肌の表面をケアするのではなく、お肌そのものを再生してしまおうというもの。

これまでの美容、アンチエイジングの概念を変えていくかもしれない大注目のテクノロジーです。

幹細胞コスメで細胞レベルから若返ると言われていますが、実際のところどうなのでしょうか?

幹細胞とは?

美容液

すべての生き物に共通しているのは細胞でできていることです。

生き物には、細菌など1個の細胞でできている「単細胞生物」と、私たち人間のように何兆個ものたくさんの細胞を持つ「多細胞生物」がいます。

単細胞生物と多細胞生物の違いは、細胞に何かしらのトラブルがあったときです。

1個しかない細胞に何かあったら、もうその生き物は死んでしまいます。

でも複数あれば、他の細胞がカバーしてくれることもあります。

個人スポーツと団体スポーツの違いのようなものです。

団体スポーツでは、ポジションごとに役割や特徴があります。

選手に何かがあったときは、ベンチのメンバーが交代で入ったり、他のポジションの人が役割をカバーしあったりします。

多細胞生物の長所は、団体スポーツのように、ある細胞がダメージを受けたときに他がカバーする仕組みや、そのカバーを専門にやっている細胞があります。

これが「幹細胞」です。

健全に保つ働き

私たちの身体を健全な状態を保つためには、古くなった細胞を新しい細胞と入れ替えたり、ダメージを受けた部位を修復する必要があります。

そのため、私たちの体では、常に細胞の再生や修復が繰り返されているのです。

幹細胞は、自らと同じ細胞を分裂によって生み出す能力と、他の細胞に変化することができる能力という、2つの特徴的な能力を合わせ持った細胞です。

この能力によって、状況に応じて必要とされる細胞を生み出すことができるのです。

幹細胞を知る上で欠かせないのが再生医療です。

トカゲのしっぽは、切り離されてもまた元通りになります。

トカゲほどではありませんが、人間にも「再生する力」があります。

再生医療とは、ケガや病気などによって自然に回復できないレベルの失ってしまった機能を薬で治療するのではなく、人の身体の再生する力を利用して、元どおりに戻すことを目指す医療のことです。

ノーベル賞受賞

ES細胞、iPS細胞という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

2012年にiPS細胞を作った功績で、京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞しました。

iPS細胞が誕生したのが、2006年。

発見から何十年もたってノーベル賞を受賞することが多い中で、発見からわずか6年でノーベル賞を受賞したというのは、いかに画期的な研究だったかということです。

人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し培養することで、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞ができます。

この細胞を「人工多能性幹細胞」と呼びます。

「induced pluripotent stem cell」という英語の表記の頭文字をとって「iPS細胞」と呼ばれています。

もちろん名付け親は、世界で初めてiPS細胞を作った山中教授です。

iPS細胞とは、どんな細胞にもなれるマルチな細胞です。

細胞は身体の中で、神経細胞や筋肉などと、だいたい200種類の細胞に別れ、それぞれまったく違った働きをしています。

どんな細胞にもなれるiPS細胞がもつ多分化能を利用すると様々な細胞を作り出すことができます。

医療現場やお肌のアンチエイジングにも

例えば糖尿病であれば血糖値を調整する能力をもつ細胞を、神経が切断されてしまうような外傷を負った場合には、失われた神経ネットワークをつなぐことができるように神経細胞を作って移植するなども考えられます。

お肌であれば、ケガの傷跡、ニキビ跡、シミのできたお肌の再生といったことも考えられます。

山中教授がiPS細胞を作るまでにも、さまざまな体の組織に分化する幹細胞としてES細胞の研究が行われていました。

しかしこのES細胞を作るために受精卵が必要なことから、命を使うという倫理的な問題が大きく立ちはだかっていました。

それに対してiPS細胞は人の皮膚組織などから作られるので、ES細胞のような問題も生じません。

そこで一気にiPS細胞を使った応用研究がはじまりました。

iPS細胞を使った老化に関する研究もその1つです。

老化して機能の落ちたお肌の細胞を新しくできたら、うるうるプルプルのお肌が取り戻せるんじゃないかと期待がふくらみます。

幹細胞コスメの実態

スキンケア

従来のコスメは、お肌のダメージをケアして補うのが目的です。

一方、幹細胞コスメに期待するのは、細胞レベルで肌そのものを再生して肌トラブルを解決するというものです。

あたかも幹細胞が入っていそうなネーミングの幹細胞コスメ。

実は、幹細胞は入っていません。

コスメの材料として幹細胞を直接使うわけではなく、「幹細胞培養液」を活用しています。

幹細胞コスメは、その成分の由来から、①植物由来、②動物由来、③ヒト由来の3タイプに分けられています。

人間の細胞と親和性が高いという理由で、ヒト由来のものが一番効果が高く、動物由来、植物由来の順で効果が高いなどとささやかれています。

ただ、いずれもあくまで培養液であって幹細胞そのものが入っているわけではないので、細胞との親和性について論じてもあまり意味のないことです。

効果が無いと言われる理由

幹細胞が入っていないのですから、幹細胞の持っている細胞を再生する機能は期待できません。

安全面からも化粧品成分として幹細胞を使うことは認められていません。

仮に幹細胞が入っていたとしても、細胞が大きすぎてお肌に吸収されることはありません。

お肌の表面にとどまって、そのまま死んでしまうだけでしょう。

幹細胞を活用して肌の機能を取り戻そうと思うと幹細胞の移植が必要になります。

化粧品に配合してお肌に塗ったとしても、幹細胞がお肌にあるヒアルロン酸やコラーゲンを作る細胞などになって、お肌がうるうるプルプルに生まれかわるなんてことは起こらないのです。

もし化粧品に配合した幹細胞がお肌から吸収されてお肌の細胞として働くとすると、傷もないのに細菌がお肌から体の中に入ったりするということにもなります。そんなことになったら大変です。

結論から言うと幹細胞コスメを使ったとしても、幹細胞が入っているわけではないので、幹細胞に期待しているお肌の再生はおこりません。

ES細胞やiPS細胞を使った再生医療は、研究段階であり実用化まではまだまだかかるため、それが化粧品に使われているということはあり得ないのです。

「幹細胞コスメには効果がないのですか?」

ここまで読むと幹細胞コスメは、お肌に全く効果のないように思われるかもしれません。

幹細胞コスメには、幹細胞が入っていないので幹細胞の持っている役割は期待できませんが、だからといって幹細胞コスメにお肌を改善する効果が無いという結論を出すには早すぎます。

いい成分も含まれている

アロマオイル

幹細胞エキスにも、お肌にとって良い成分が含まれています。

例えば、ヒト幹細胞エキスとは、ヒト幹細胞を培養した上ずみ液のことです。

つまり、配合されているのは、ヒト幹細胞を培養して、細胞を取り除いた後に残った培養液です。

この培養液の中には、幹細胞が分泌した成長因子や様々な成分、酵素、コラーゲン、ヒアルロン酸などが含まれています。

さらに、ターンオーバーを促して、シミやくすみのないなめらかな肌へと導くEGF(上皮細胞成長因子)や、真皮の線維芽細胞に働きかけてハリや弾力をもたらすFGF(線維芽細胞成長因子)、ダメージを受けた細胞の修復やコラーゲンの合成を促進するPDGF(血小板由来成長因子)など、他の類を見ないほどの多数の成長因子を含んでいます。

幹細胞エキスにこれらの成分が含まれていることから、お肌本来の再生力にアプローチすることで、シワやたるみのない若々しい肌へと導くことが期待されていると表現されます。

ただ、これらの成分が、真皮まで届いたらということになります。

お肌の表面に塗ったからといって真皮層まで浸透して効果を発揮するものではありません。

試験管などでの実験とお肌に実際に塗った場合とでは結果は異なります。

幹細胞コスメに期待できるのは、今のところあくまでスキンケアとしての効果です。

細胞の再生を促す成分は分子量が大きいため、お肌を作っている真皮層細胞までは届かずお肌の再生までは期待できません。

コラーゲンやヒアルロン酸など他の副産物成分には、お肌の表面に塗ることで保湿効果を高める働きがあります。

その他の副産物成分もお肌にプラスになる成分もあるかもしれません。

今のところ幹細胞コスメに期待できる効果は、他の機能性コスメ以上に画期的とまでは言えません。

最新のテクノロジーということで高い値段が設定されているので、これまでのコスメのコスト対効果もあわせて検討して選ぶと良いでしょう。

まとめ

・幹細胞コスメに幹細胞は含まれていない。

・幹細胞がもっている再生効果は期待できない。

・すでにある機能性コスメと同じ効果は期待できるものがある。

・幹細胞培養液を効果の認められる量を配合すると化粧品としては高価になりすぎる。

・既存のコスメのコスト対効果とあわせて検討する。

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