リノール酸について、アレルギーのもとになってしまうとか善玉コレステロールを減らしてしまうとか、様々な話が飛び交っています。
しかし、リノール酸は人間が生きていく上で必ず摂取しなければならない必須脂肪酸。
「摂ったらよいのか避けたらよいのか分からない!」
という人もいますよね。
今回はそんなリノール酸の正しい知識についてまとめました。
目次
リノール酸とは?
リノール酸は不飽和脂肪酸の一種で、人間が生活をする上で食事から摂取しなければならない必須脂肪酸に属しています。不飽和脂肪酸にはDHAやEPAのような血液をサラサラにする効果が高いとされている栄養もあって、身体によいイメージがありますよね。
しかし、最近メディアではリノール酸によってアレルギーや炎症を引き起こす原因となったり善玉コレステロールの量を減らして生活習慣病を招いたりというデメリットについて頻繁に取り上げられるようになりました。
そこで思うのが、
「必須脂肪酸は摂らなければならないはずなのに、なぜ悪者のように扱われているの?」ということ。
実は、リノール酸は必須脂肪酸でありながら摂取方法によっては身体によくない効果をもたらしてしまう、ちょっとクセがある栄養素なのです。
健康な生活を送るためにも、リノール酸について正しい知識を身につけておきましょう。
リノール酸の役割
そもそも、リノール酸にはどのような役割があるのでしょうか?
リノール酸を摂ることによる良い効果と悪い効果についてまとめました。
リノール酸を正しく摂取した場合
まず、リノール酸を正しく摂取した場合にどのような効果が期待できるかを知りましょう。
リノール酸には、
- 血液中のコレステロールや中性脂肪の値を下げる
- 血液をサラサラにする
- 疲労を溜めにくくする
- 高血圧や循環器系の病気、生活習慣病の予防
- 胞膜のリン脂質を構成
- 生理活性物質の材料
- 髪の毛のツヤの維持や抜け毛の予防
などの働きや効果があります。
正しく摂取すれば、リノール酸にもDHAやEPAなどのほかの不飽和脂肪酸と同じように中性脂肪やコレステロールの値を下げたり血液をサラサラにしたりという働きがあります。
血流がよくなると、酸素や栄養が細胞に行きわたって老廃物や毒素を流すことができるようになります。そうすると疲労が溜まりにくくなりますし、高血圧を改善して動脈硬化や心筋梗塞など循環器系の病気を予防するのにも効果的です。
また、リノール酸は細胞膜のリン脂質を構成する栄養素だということもありますし、体内で起きた炎症や傷を抑えたり治したりする生理活性物質の材料にもなります。リノール酸は生きていく上で必要不可欠な栄養素だと言えそうですね。
そんなリノール酸は、髪の毛の健康を維持する作用もあり、髪の毛のツヤや抜け毛にも効果的だと言われています。
リノール酸の摂取方法
リノール酸は、適量の摂取だけでなくα-リノレン酸との摂取バランスも大事になります。また、正しい摂取方法も併せてチェックしておきましょう。
リノール酸の適切な摂取量
リノール酸について、最も重要なのが適切な摂取量を守るということ。推奨されている摂取量は下記のように年齢によって違ってきますので注意してください。
- 18~29歳:(男性)11g、(女性)9 g
- 30~49歳:(男性)10g、(女性)9 g
- 50~69歳:(男性)10g、(女性)8 g
- 70歳~ :(男性)8g、(女性)7g
リノール酸を多く含む食材
リノール酸を多く含んでいるのは主に植物油です。サフラワー油やヒマワリ油、ゴマ油などの調理油のほか、くるみや落花生、マツの実などのナッツ類にも多く含まれています。
以下、リノール酸が多い食品の100gあたりのリノール酸の量です。
- サフラワー油:70000mg
- ヒマワリ油:58000 mg
- ゴマ油:41000 mg
- くるみ:41000 mg
- まつ:31000 mg
- 落花生:16000 mg
こういった数字からはちょっと想像がつきづらいかもしれませんが、現代の日本では脂っこい食事も多く、過剰摂取する人が多い傾向にあります。
こういった油以外にも、リノール酸は実は牛や豚、鶏などのお肉や卵、魚などの食材にも含まれていますし、スナック菓子などの加工品や揚げ物、油漬けの缶詰め、ドレッシングやバターなども多くのリノール酸を含んでいます。気づかないうちに摂取していることも多そうですね。
なるべく油を使わないように煮たり蒸したりしたものを食べるなど、調理方法にも工夫しましょう。
併せて摂りたいαリノレン酸とは
αリノレン酸は、リノール酸の摂り過ぎで起こる炎症を抑えてくれる効果がある栄養素。そんなαリノレン酸とリノール酸とのバランスはとても重要になります。比率としてはリノール酸:αリノレン酸=10:1前後が目安になります。
αリノレン酸の比率は多少多くなってしまっても炎症を引き起すことはありませんので、安心してください。
しかし、バランスよく食べるのは難しいですよね。そこで摂りたいのがリノール酸とαリノレン酸をどちらも含んでいるバランスが良い食材です。
おすすめしたいのはスッポンのお肉。
100gあたりに含まれるリノール酸が910mg、αリノレン酸550mgとなっていて、ほかの食材と比べてもとてもバランスがよい食材ですよ。これらの栄養のほかにもDHAやEPAも豊富ですので、相乗効果で血液をサラサラにすることができますね。
誤ったリノール酸の摂取方法をした場合
次に、リノール酸を間違った方法で摂ってしまった場合に現れるデメリットについて見ていきましょう。
リノール酸を摂り過ぎてしまった場合には、アラキドン酸を多量に作ることになります。このアラキドン酸は、炎症やアレルギー性疾患を起こすロイコトリエンやプロスタグランディンといった生理活性物質や、血管を狭めたり血小板を固めたりするトロンボキサンのもとになります。
そのため、リノール酸の過剰摂取はアトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患を悪化させてしまうことに繋がりますし、血管が狭まったり血栓ができたりすることで高血圧になりやすくなり、動脈硬化や心筋梗塞のような循環器系の生活習慣病のリスクが高まることになります。同じ栄養素なのに正しく摂取した場合と全く反対の効果になってしまうのは驚きですよね。
リノール酸は過剰摂取だけではなくの間違った使い方をすることでも健康に害を与えてしまう可能性があることが分かってきました。最近の研究では認知症の原因にもなってしまうという議論があるのです。
その原因が、リノール酸が酸化することで発生するヒドロキシノネナールという毒素。脳の海馬や小脳の神経細胞に影響を与えてしまう可能性がある非常に恐い物質ですが、これはリノール酸の摂取方法に気をつけることで避けることができます。
ですから、酸化させないようにすることが重要になります。
具体的には、加熱や古くなってしまったものほど酸化してしまいやすいので、
- 食材や油はなるべく鮮度が高いものを利用する
- 揚げ物の油などは何度も繰りかえして使わない
ということを徹底するようにしましょう。
また、体内での酸化を防ぐ働きがあるビタミンEは、リノール酸と一緒にぜひとも摂取したい栄養です。スッポンはこのビタミンEも豊富な食材です。同じように体内での酸化を防ぐ役割があるβカロチンと一緒にお鍋で食べれば、リノール酸が持つ健康効果を最大限に引き出すことができますよ。
人間が生きていく上で必要な栄養素の1つであるリノール酸。正しい知識を身につけ、上手くお付き合いして健康な身体を手に入れたいですね。